2011年6月アーカイブ

後継者の育て方

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質問

後継者の育て方には、どんなものがある?

答え

社内だけでなく、社外での教育もあります。積極的に活用しましょう。


一般的な後継者の教育は、以下のような順序で進めます。

  • 社内の様々な部署に配属する
  • マネージャー(管理職)として責任のある地位を与える
  • 現経営者の傍らで、直接指導を受ける

ここで重要なのは、後継者を単に従業員の一人として扱ったり、社長の弟子のように従わせたりすることではなく、後継者が企業経営に必要な実務について、一般的な知識だけでなく、自社に適した形で体得し、実践できるようになることです。 そのために、後継者には、現場の具体的な役割を与えて、実績を積ませます。

これらの社内での教育に加えて、社外で様々な経験を積むことも、貴重な教育の機会になります。

  • 取引先や関連会社など、社外で勤務経験を積む
  • 可能であれば、子会社などの経営を経験する
  • ビジネススクール、セミナー、研修などに参加する

後継者の教育を通じて、本人に経営者としての自覚が備わることや、従業員など社内外のサポートを得られる環境がをつくられることも重要です。 知識や経験を得ることだけに偏らないようにしましょう。


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質問

後継者の配属(社内教育)のさせ方は、どのようにすれば良い?

答え

大きく4つの分野で企業経営の要素を体得しましょう。

後継者を「社内の様々な部署に配属する」のは、単に営業、経理、生産、といった既存の部門の一員として業務経験を積めば良い訳ではありません。 後継者が、企業経営の要素を(一般論だけでなく)自社に適した形で体得し、実践できるようになることが重要です。 そのために、後継者には、現場における役割を与えて、実績を積ませるのです。

ここでは、企業経営の要素を「オペレーション」「財務・会計」「マーケティング」「人事・組織」に分けています。 それぞれの意味する具体的な内容は、企業によって多少異なります。 ラーメン店を例にあげて、後継者が実践すべき企業経営の要素を考えてみましょう。

「オペレーション」で実践すべき要素
  • 日々、店内を清潔に保ち、美味しいラーメンを作り、お客様をもてなすこと
  • 日々のお金の出入り、原材料や備品などの調達や管理を行うこと
  • 日々、業務を改善し効率化すること

「財務・会計」で実践すべき要素
  • 会社の資産(店舗や設備、在庫や売掛金など)、負債(長期・短期の借り入れ、買掛金など)の現状を正確に把握すること
  • 将来必要になる資金の見通しと、資金調達の計画を立てて実行すること

「マーケティング」で実践すべき要素
  • 来店するお客様の傾向(年齢、性別、味の好みなど)や地理的な分布(商圏)、同じエリアのラーメン店や飲食店の状況を把握して、自社の方針を決めること
  • 店舗コンセプトやメニューの構成、集客方法などを計画し実行すること

「人事・組織」で実践すべき要素
  • 業務の流れ(フロー)に応じた、組織や各従業員の役割(業務)を決めること
  • 従業員が業務で必要なスキルを身に付けられる仕組み(教育や評価制度など)を計画し実行すること
  • 社長や後継者が、良い態度・行動を率先して示して、良い社風をつくること

例えば、この企業では経理担当者の主な仕事は、日々発生する伝票を輪ゴムでとじて、税理士さんに渡すことかもしれません。 その作業を経理部に配属された後継者が経験しても(問題意識は芽生えるかもしれませんが)それだけでは「財務・会計」という企業経営の要素を体得したことにはならない、ということです。




後継者の配属(社内教育)の進め方

質問

後継者の立場からみた社外教育とは?

答え

「商品・サービス」「顧客・取引先」「従業員」を生み出す視点で、積極的に社外で活動しましょう。

このウェブサイト(後継ぎSOS)を含めて、通常、後継者を社外で教育する、という場合、社長が後継者に向かって、「経営スキルを身に付けさせるために行ってこい」と命じるような状況を想定しています。(例:STEP2 「後継者の育て方」参照) もちろん、後継者が自ら「行かせてください」と言う場合もあると思いますが、 後継者の立場から事業承継を見た場合、上記のように受け身で教育を受ける以外に、 もう少し積極的に取り組んでおいた方が良い内容が考えられます。

将来、後継者が社長となって会社を引っ張る、おそらくは数十年にわたる期間、
  • 現在の商品・サービス
  • 現在の顧客・取引先
  • 現在の従業員
がいずれも、数十年間ずっと、全く変わらずに存在するという事態は、考えにくいでしょう。
特に、創業以来、
  • 創業社長によって生み出された商品・サービス
  • 創業社長が開拓した顧客・取引先
  • 創業社長と共に過ごした従業員
が今も続いているような会社(多くは比較的小さな会社)では、経営の大きな転換がいずれ必要になるのは明らかです。
後継者が好むと好まざるとに関わらず、後継者が経営者になった際には、
  • 新しい商品・サービスを開発する能力
  • 新しい顧客・取引先を開拓する能力
  • 新しい従業員を採用・育成する能力
こういった能力が、いずれ必要になるのです。

これらの能力は、概ね、創業する人に求められる能力と同じです。 事業承継はしばしば、第二の創業ともいわれますが、本質をついていると思います。
そして、上記の能力はいずれも、情報収集や情報発信、社外の人とのコミュニケーションなど、会社の外とのやり取りを重ねながら、徐々に獲得するものです。 誰かがぱっと教えてくれて、すぐにできるようになるものではありません。

つまり、後継者の立場からみた社外教育とは、「商品・サービス」「顧客・取引先」「従業員」を生み出す視点をもって、
  • 様々な業界、人との関係を構築すること
  • 自分なりの情報収集・情報発信手段を持つこと
  • 第二創業に必要な専門知識を獲得すること(新しい技術・顧客層・販売方法、等々)
を意識しながら、積極的に社外と関わって、自分の能力を高めていくことだと言えます。

後継者の立場からみた社外教育

質問

後継者には、どのように接すればいい?

答え

後継者以外の方々にも目を配りつつ、後継者との相互理解を深めて、心理的な距離を縮めましょう。


社長と後継者が心を通わせられるよう、頻繁にコミュニケーションを取ることが基本です。

  1. 後継者との密なコミュニケーションを図る
  2.  社長さんと後継者との間に心理的な壁があっては、円滑な経営のバトンタッチは難しいでしょう。 お互い関心のある話題だけでなく、意識的に多くのトピックを取り上げて、自分の考えを伝えると同時に、相手の考えも理解するようにしましょう。 また、後継者の資質と、彼(彼女)の下した意思決定を認めない限り、経営のバトンタッチは実現しません。 後継者に多様な業務経験を積ませて、社長は後継者がどのように業務上の意思決定を下すのかを理解しておきましょう。 


  3. 後継者をサポートする体制をつくる
  4.  経営上の最重要課題が事業承継であっても、社長の関心が後継者ばかりに向かうのは考えものです。 特に後継者以外の親族が社内にいる場合など、自分が退いた後に、社内外の関係者が後継者をサポートするよう、経営体制・人事を検討しましょう。 


  5. 社員の動き方や、業務の流れを整理・改善する
  6.  社長の経験や勘を、そのまま後継者に引き継ぐことはできません。 トップダウンだけでなく、毎回指示しなくても(ボトムアップで)会社が動く仕組みをつくりましょう。


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