2011年7月アーカイブ

事業承継計画は必要?

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質問
事業承継計画って、そもそも必要なの?
答え
作成義務があるわけではありませんが、是非作りましょう。

事業承継をスムーズに行うためには、経営の現状を分析して将来の課題を洗い出した上で、それら問題と課題を、どのようなスケジュールで解決していくかをまとめなければなりません。

そのためには、現在の経営状況(取締役や株主の構成がどうなっているか等)、将来発生しうる課題(現経営者が所有する「株」をめぐり、会社の支配権争いが起きないか等)を個別具体的にピックアップしていく作業がまず必要です。

スケジュールについても、現経営者の年齢や後継者候補者の年齢・地位等に鑑みて、5年先に実行するのか10年先に実行するのか等を決めなければなりません。

このような作業については、事業承継計画書を作成し、現経営者・専門家・後継者候補者において、共通の認識を持っておくべきでしょう。

事業承継計画書については、本HPにも掲載しておりますので、参考にして下さい。
(URL:http://www.atotsugi-sos.jp/06/01.html
質問
先代経営者が亡くなった後、会社の支配権をめぐって相続でもめないためにはどうしたらよい?
答え
遺留分に関する民法の特例制度の利用を検討しましょう。

後継者に会社の経営権を集中させるために、生前に、先代経営者が後継者候補者に株式等を全部贈与しておくというようなケースはよくあることでしょう。しかし、このようなケースの場合、他の相続人から遺留分を侵害すると主張され紛争に発展する可能性もあります。

このような事態を防ぐには、遺留分に関する民法の特例制度の利用を検討しましょう。

遺留分に関する民法の特例制度とは、旧代表者の推定相続人全員の合意により、①後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等を遺留分算定の基礎財産から除外したり(除外合意)、または、②そのような株式等を遺留分の算定の基礎財産に含めるとしても、その価額を合意時点の価額に固定しておくこと(固定合意)をいいます。

これらの特例を利用するには、特例中小企業者であることなど、経営承継円滑化法所定の要件を充たしておく必要がありますので、要件を充たしているかどうかのチェックが必要です。要件を充たしているかよく分からないという場合は、専門家に相談してみましょう。
質問
「除外合意」や「固定合意」は、当事者間だけで合意しておけばよいのですか。
答え
当事者間の合意のほかに経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要となりますが、後継者単独での手続となりますので、他の相続人に手続的な負担が及ぶことはありません。

経済産業大臣の確認を求める申請は、合意をした日から1ヶ月以内、家庭裁判所の許可を求める申請は経済産業大臣の確認から1ヶ月以内と、それぞれ期間制限がありますので注意をして下さい。

質問

後継者に経営権を集中させるためには、とにかく株式を集中させておくことだと思いますが、そのために利用できる種類株式はありますか。

答え

議決権制限付株式、拒否権付種類株式、全部取得条項付種類株式が考えられますが、それぞれデメリットもありますので、利用にあたっては慎重な検討が必要です。
質問
経営者が後継者に交代する場合に、先代経営者が金融機関に行っていた個人保証はどうなるの?
答え
原則として、金融機関の承諾を得て保証を解除しない限りは、経営者が交代しても先代経営者の保証は継続したままということになります。

放置しておけば、先代経営者の知らないところで会社債務がふくらみ、忘れた頃に突然金融機関から保証債務の履行を要求されるということにもなりかねません。そうならないためにも、金融機関との間で協議をし、保証人も併せて交代できるよう努力しましょう。

現経営者が高齢の場合

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質問
現経営者は高齢です。今は元気ですが、今後年をとるにつれ、認知症などにかかり、判断能力が低下していくことが心配です。何か今のうちにしておくべきことはないですか。
答え
判断能力が確かなうちであれば、任意後見契約を活用しましょう。任意後見契約は公正証書で締結しておく必要がありますが、法定後見に原則として優先するため、他の親族による法定後見人の選任をブロックして、後継者争いを防止することも可能です。

また、任意後見契約であれば、現経営者が望む人物を任意後見人に選任できるというメリットもあります。ただ、制度上、任意後見人に依頼できるのは法律行為の代理であり、また代理権の登記も必要となるので、会社経営を一任したりすることができません。

また、実際に判断能力が低下した場合は、任意後見監督人選任の申立を家庭裁判所に行う必要があり、この場合、誰が任意後見監督人となるかは分からない(現経営者や会社が望む人物とは限らない)ので、この点も考慮に入れて活用する必要があります。

質問

事業承継に遺言を利用したいけど、どういう種類の遺言があるの?

答え

遺言には、普通の方式として、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがあります。特殊な場合として、危急時遺言と隔絶地遺言がありますが、事業承継に活用することはまずありませんので、ここでは割愛します。

事業承継に適した遺言

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質問
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言、事業承継に用いるならどれが一番良い?
答え
事業承継に用いるならば、公正証書遺言が一番良いでしょう。 自筆証書遺言は作成が容易で費用がかからないというメリットはありますが、要式が厳格なため、1つ作り方を間違えると無効となってしまうリスクがありますし、公正証書遺言のように公証役場に原本が保管されるわけではありませんので、紛失・隠匿・変造・偽造のおそれを避けられません。

秘密証書遺言は、自分が死ぬまでは遺言の内容を秘密にしておきたいというときには有効な方法ですが、作成したという事実だけが公証役場に記録され、作成した内容自体は公証役場に記録保管されないため、自筆証書遺言と同様、紛失・隠匿・偽造・変造のおそれが避けられません。

以上に対して、公正証書遺言の場合、作成費用はかかりますが、公証人が遺言の内容・遺言者の真意等をチェックした上で作成しますから、内容が不明確である等で有効無効の争いになることは考えにくく、偽造・変造のおそれもないと考えてよいでしょう。また、遺言書の原本が公証役場に保管されますので、紛失・隠匿のおそれもありません。

誰が株式を相続するか等の問題は、会社の支配権の行く末を左右する重大な問題ですから、遺言を活用する場合には、紛失・隠匿・偽造・変造・のおそれがなく、後の争いが起きにくい公正証書を用いるべきでしょう。
質問
遺言を事業承継に用いる場合のリスク・注意点は?
答え
遺言の場合は、一度遺言を作成しても、その後に撤回や変更が可能なため、知らず知らず、現経営者が遺言を撤回・変更していたという場合には、もともとの後継者候補者にとって不意打ちとなるおそれがあります。

また、遺言は、遺言者が死亡して初めて効力を発生させるため、現経営者が、亡くなるまで会社の株式を保有し続けるという事態も考えられ、現経営者から後継者へ経営権を移していくスケジュールが立てにくいという点もあります。

さらに、遺言で後継者として目されていた受遺者が現経営者よりも先に死亡してしまうというリスクもあります。この場合、法定相続により、想定していない人物が株式等の相続人として登場するリスクもありますので、注意が必要です。

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