2012年8月アーカイブ

質問

株式の評価方法について教えてください

答え

株式の評価方法については、かなり複雑ですのでこちらでは概略を説明いたします。
株式の評価方法は大きく2つに区分されます。上場株式と取引相場のない株式(非上場株式)です。

1.上場株式
上場株式は証券取引所にて日々売買がなされていますので、評価額についてもその終値を使用します。ただし、株価は変動がありますので、税務上では原則として次のように平均値を使って評価を行います。

以下の金額の最も低い金額を評価額とします。
 ・ 相続開始日の終値
 ・ 相続開始日を含む月の終値の月中平均
 ・ 相続開始日の前月の終値の月中平均
 ・ 相続開始日の前々月の終値の月中平均

2.取引相場のない株式(非上場株式)
非上場株式については、上場株式のように売買がなされるものではありませんから、税務上では財産評価基本通達にしたがって次のように評価を行います。

◆大株主の場合・・・原則的評価方式
 ① 類似業種比準方式(対象会社と業種の類似した上場会社の平均株価と比較して計算する方式です。)
 ② 純資産価額方式(1株当たりの純資産価額を用いる方式です。)
 ③ ①と②の併用方式

◆少数株主の場合・・・特例的評価方式
 配当還元方式(1株当たりの平均配当実績を資本還元率で除して計算する方式です。)


なお、事業譲渡やM&Aなどに対して用いられる株価の評価方法については、法定化されたものはありませんが、上記の税務上の評価方法を準用したり、またDCF方式などといった評価方法を用いて算出します。
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質問


従業員等へ承継させる際は、どのような点に留意すれば良いでしょう?


答え


1.現経営者の親族の意向をよく確認しておく。
継ぐ気がないと思っていた親族が突然継ぎたいと言い出したり、親族から思わぬ反対が出るケースもあります。事前に十分な話し合いを行い、意思の確認をしておきましょう。


2.後継者に一定の株式を保有させる。
後継者が主体的に経営を進めるためには、事業承継に伴い後継者に一定の株式を保有させることが必要ですし、それにより新経営者としての責任感が一層高まります。
但し、一般的に後継者に株式取得のための資力がないケースが多く、そのような場合は、株式取得のための資金の融資先を探すなど対応策を講じておくことが必要です。

3.事業承継に先立ってできるだけ債務の圧縮を図る。
中小企業の場合、会社の借入金については金融機関に対してオーナーの債務保証が必要です。
金融機関は、実績、信用力のある現経営者から新たな後継者候補に保証人を切り替えることに難色を示すことが多く、また、現経営者の資産を相続する立場にない従業員等にとっては、会社の債務を保証することは大きな負担になります。
後継者の債務保証を軽減できるよう、金融機関と交渉を行い、最終的に個人保証・担保が完全に処理しきれない場合は、負担に見合った報酬や対価を後継者に与えることが必要となる場合もあるでしょう。


事業承継には、多額の資金ニーズが発生し、また、代表者の交代にともなって、信用力低下による取引・資金調達等への支障が生じることもあります。
そのような際、経済産業大臣の認定を受けた企業においては、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき、信用保険の別枠化や日本政策金融公庫等による貸付などの金融支援策を利用することができます。

質問

自社株式、事業用資産を後継者に移すにあたって注意すべきことはありますか?

答え

 
中小企業の経営を動かすのが株主総会です。
後継者の経営権を確固たるものにするためには、株主総会における議決権を相当数保有していければなりません。
後継者にはできれば3分の2以上、最低でも過半数の自社株式(議決権)を保有させたいものです。


また、中小企業の経営者は、個人の資産(不動産等)を事業に利用していることが多く、そのような事業用資産も後継者に承継させなければ、事業の継続が困難になる場合がありえます。


事業承継の当初から自社株式(議決権)や事業用資産を移す必要もありませんが、実質的に経営権が移転し、新体制での経営が安定した時期に、自社株式(議決権)や事業用資産を相当程度、後継者サイドに移動すべきでしょう。
その際、自社株式や事業用資産の買取資金がいくら必要になるのか、それをどうやって確保するのかを検討し、もし、後継者に資力がなく贈与によって移転する場合は、贈与税の負担について備える必要があります。


自社株式や事業用資産を後継者に承継させる内容の遺言書を作成し、現経営者亡き後に承継させるという選択もありますが、いずれにしましても相続財産の大半が自社株式や事業用財産である場合、経営者が死亡すると後継者へそれらを集中させることが困難となりますし、相続人の遺留分減殺請求のリスクがあります。


後継者への承継に必要な資金の準備と後継者以外の相続人への配慮が非常に重要なポイントとなりますので生前に十分な対策を講じることが必要です。


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質問

事業承継にあたり人事労務の問題はどう取り扱えばよい?

答え
中小企業によく見られることですが、雇用条件をきちんと明示していない、本来必要な残業代を支払っていない、残業をさせているが36協定の締結・届出していないなど、経営者が意識できていない部分で、労働基準法等に違反していることがあります。


もし、違反を見過ごしたまま事業承継を行い新体制がスタートしてしまうと、後継者は、先代経営者時代の違反のために、思わぬ請求や労基署による行政処分等を受ける可能性があります。たとえば、残業代の時効は2年ですが、それでも複数名から同時に残業代請求がなされた場合には、中小企業の資金繰りにとっては、馬鹿にならない金額になることもよくあります。


また、会社を守るためは、法令遵守だけでは足りず、事業承継前に、就業規則や雇用契約書にも様々な工夫を施す必要があります。


トラブルを防止し会社を守るためは、人事労務関連のリーガルチェックを実施するとよいでしょう。
チェック項目の一例としては、
 □ 就業規則など法令上必要な諸規程が作成されているか
 □ 労基署への届出を忘れていないか
 □ 就業規則や雇用契約書の内容に不備もしくは会社に不利な点はないか
 □ 残業代の計算方法・支給方法は適切か


などがありますが、チェック項目は多岐にわたりますので、事業承継前に専門家のサポート受けて社内の問題点調査を行い、後継者へのスムーズなバトンタッチを行いましょう。



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会社分割

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質問
有望な後継者が2人おり、承継後はツートップ体制としたいが、どうにも2人のウマが合わない。どうしたらよい?
答え
 会社分割を検討してみましょう。

 事業承継を検討する際に、後継者候補となる人物が複数いる場合、候補者同士の人間関係もひとつのポイントです。ツートップ体制とした場合に、本当に会社がうまくいくのか慎重に検討しないとなりません。
 例えば、それぞれに経営能力のあるA取締役とB取締役がおり、この2人のツートップ体制として事業を拡大していきたいが、2人の相性が悪いといった場合です。 このような場合にツートップ体制としてしまうと、せっかく事業拡大をにらんで事業承継をしたのに、事業承継後に権力争いが起き、大事に育ててきた会社が内輪揉めにより弱体化してしまうといった事態も懸念されます。

 そこで、あえて無理にツートップ体制とせず、会社分割をすることで、2人の対立を回避する方法が考えられます。 まずは会社を事業部門ごとに分割し、新たに2社を新設します。
 その上で新設した2社に事業部門毎に事業を承継し、各候補者をトップに据えます。 併行して、先代経営者が保有する2社の株式を、それぞれの候補者に分け与えていきます。

 会社分割を行うにあたっては、対株主・対債権者・対従業員・対取引先など、さまざまな利害関係者との関係で、違法性がないかどうか等も含め多くのチェックポイントがありますので、見落としの無いようにするためにも、専門家のアドバイスを受ける事をお勧めします。


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質問
息子に事業承継させたいが、息子に会社を継ぐ意思がない。どのようにして事業承継したらよい?
答え
MBOの活用を検討してみましょう

 MBOとは、マネジメント・バイアウトの略で、経営陣による会社の買収です。

 例えば、100%株主でオーナー兼代表者であるA社長としては、息子を次期社長にと考えていたが、息子は会社を継ぐ意思がないし、他の親族にも後継者候補者が見当たらないというような場合です。このように、現社長の親族に後継者がいない場合には、MBOを実施し、現経営陣に事業承継することを検討してもよいでしょう(もちろん、現経営陣ならば安心して会社を任せられるということが前提ですが)。

 現経営陣には、これまでA社長が100%保有していた自社株式を買い取ってもらいます。
 現経営陣としては、オーナーと経営者の分離を避けることができ、スピーディーな意思決定が可能となりますし、株式を保有することでオーナー兼経営者となり、自社の価値を磨こうと経営に対するモチベーションも上がることでしょう。

 このMBOは、現経営陣が株式を買い取ることが前提ですので、現経営陣に買い取るだけの資力がない場合には、LBOの活用など資金調達方法も検討が必要でしょう。やはり各種専門家のサポートが必要です。


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