2012年10月アーカイブ

質問

事業承継税制の概要について教えてください

答え

事業承継税制は平成21年の税制改正により導入されました。一定の要件を満たすことにより、後継者が株式を贈与により取得した際の贈与税や、相続等により取得した際の相続税の納税が猶予されます。

ただし免除ではなく猶予となりますので、この制度の適用を受けた後に要件を満たさなくなった場合には猶予された贈与税・相続税を納める必要があります。
一般的に要件を満たすことは大変厳しいので、適用を受ける前に十分検討する必要があります。

なお、この事業承継税制の適用を受けた場合には後継者に相続財産が集中することがありますので、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。
そのため、遺留分に関して民法の特例制度が設けられています。(概要はこちらを参照ください。)


① 贈与税の納税猶予制度の概要

経済産業大臣の確認を受け、後継者が先代経営者から贈与により株式を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、先代経営者の死亡の日までその贈与税の全額が猶予されます。

この適用を受けるためには、後継者・先代経営者・贈与した株式に係る対象会社など、それぞれに要件がありますので注意が必要です。

そして、この制度の適用後は、一定の期間ごとに経済産業大臣への報告と税務署に継続届出書の提出が必要となります。

なお、この制度の適用後に、贈与を受けた株式を売却しない、自社の従業員の雇用を守るなどの要件に該当しなくなった場合には、贈与税の納税猶予が解除され、猶予された贈与税を全額納める必要があります。

また、この制度の適用後に先代経営者が死亡した場合には、贈与税が免除となります。ただし、贈与を受けた株式は相続等により取得したものとみなされますので相続税が課税されますが、一定の要件により次の②の相続税の納税猶予制度の適用を受けることができます。


② 相続税の納税猶予制度の概要

経済産業大臣の確認を受け、相続人である後継者が先代経営者から相続等により株式を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、その後継者の死亡の日までその株式に係る相続税の80%相当額が猶予されます。

この適用を受けるためには、贈与税の納税猶予制度の場合と同様に後継者・先代経営者・株式に係る対象会社など、それぞれに要件がありますので注意が必要です。

そして、この制度の適用後は、一定の期間ごとに経済産業大臣への報告と税務署に継続届出書の提出が必要となります。

なお、この制度の適用後、相続した株式を売却しない、自社の従業員の雇用を守るなどの要件に該当しなくなった場合には、相続税の納税猶予が解除され、猶予された相続税を全額納める必要があります。

(平成24年6月30日現在の法令によります。)
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質問

相続による株式の分散を防止するために会社の定款に「相続人等に対する売渡請求」の規定を入れたいのですが、注意点はありますか?

答え


「相続人等に対する売渡請求」の規定、
たとえば「相続,合併その他一般承継により当会社の株式を取得した者に対し
当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」
という定めを定款に設けることによって、
株主として好ましくない者に株式が相続された場合に,
その定款の定めに基づいて売渡し請求の株主総会決議を行うことで,
会社は強制的に株式を買い取ることが可能になります。
ただし、売渡請求ができるのは相続等があったことを会社が知った日から1年以内で、
対象となるのは譲渡制限株式のみであり、取得には財源規制があります。

「相続人等に対する売渡請求」の規定を設けることによって
相続による株式の分散を防止したり、
会社の望まぬ者へ株式が渡らないようにすることができますが、
この規定が裏目に出る場合もあります。
それは、オーナー社長が早期に亡くなった場合、
オーナー社長の相続人に対し売り渡しの請求がなされる可能性があるという点です。
会社が株式を買い取る際の株主総会の決議では、
売渡請求の対象者は議決権を行使することができないため、
例えば、オーナー社長が全株式の90%を、他の株主が10%の株式を持っている会社で、
オーナー社長が亡くなった場合、
他の株主だけの決議で、オーナー社長が保有していた90%の株式を会社に買い取らせて
オーナー社長一族を会社から排除してしまうこともできるのです。
ですから「相続人等に対する売渡請求」の規定を定める場合は、
このようなリスクを回避する策を同時に講じておく必要があります。


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