2013年3月アーカイブ

質問

後継者の実績づくりのため、新規事業の立ち上げを任せたいが?

答え

事業承継と新規事業立ち上げ、どちらを急ぐのか、優先順位をつけましょう。


 後継者(候補)が、新規事業立ち上げなど、難しい役割を担うことがあります。 特に、後継者としての実力が十分であることを、社長や後継者自身が社内外に対して示したい時に、後継者を新しいことにチャレンジさせて、実績を残そうとする傾向が見られます。


 次の世代に備えるため、会社として新規事業を育てることは、大変重要なことです。 ただし、新規事業の立ち上げを任せる場合、後継者が新規事業に注力するあまり、既存事業を含む社内全般に対する知識や興味、さらに既存事業に関わる従業員や取引先との関係をおろそかにしないよう、十分気をつける必要があります。


 また、新規事業立ち上げは、必ず失敗のリスクを伴います。 仮に新規事業が上手く立ち上がらなくても、後継者が(失敗の責任を一身に背負って)社内での求心力を失わないよう、新規事業は、一部のメンバーだけ取り組むものではなく、全社的な取り組みにするべきです。


 さて、そもそも事業承継の目的は、会社の事業を後継者に引き継ぐことであり、新しい事業を立ち上げることではありません。
 事業承継も、新しい事業を育てることも、企業の長期的な継続のために必要であり、どちらも難易度が高く、ヒト・カネ・時間がかかる取り組みです。 仮に後継者が新規事業の立ち上げに成功したとして、それは事業承継のプロセス全体から見れば、その一部をこなしたに過ぎません。 むしろ、新規事業に労力をかける分、事業承継は進んでいないと言えます。


 つまり、事業承継を急ぐのであれば、このタイミングでは新規事業に手を出さない(後継者に新規事業の立ち上げを任せない)方が良いということです。 新規事業立ち上げと事業承継との間には、きちんと優先順位をつけましょう。


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質問


親族へ承継させる際は、どのような点に留意すれば良いでしょう?


答え


親族に事業を承継させたいという希望があり、承継者となる意思がある親族がいるのであれば早い段階で事業に参加してもらい、下記のポイントを見極め、十分に教育をし、従業員・取引先等に承継者に対する信頼を得ておく必要があります。
  ・事業承継する覚悟が本当にあるのか
  ・社長としてふさわしいのか
  ・社長としての能力はあるのか
  ・従業員はついていくか
  ・取引先はついてくか
親族内承継で、現オーナー亡き後に承継者に事業用財産を相続させる場合、
自社株式や事業用財産を承継者に集中して相続させる旨の条項を盛り込んだ遺言書の作成を検討します。
この際、注意が必要なのが、民法上の「遺留分」という制度です。
「遺留分」は遺言書をもってしても除外できない、相続人が主張できる最低限の相続財産の取り分です。
相続人が複数いると、承継者以外の相続人に「遺留分」を主張され、
遺言の内容どおりに財産の引き継ぎが実現できない可能性もありますので、
この「遺留分」を念頭において相続財産を分配するなど、紛争を未然に防ぐ事業承継対策をする必要があります。

なお、中小企業経営承継円滑化法では、事業承継に際しての相続の「遺留分」に関する規定の特例が設けられています。
具体的には、相続開始前にあらかじめ推定相続人全員の合意の上で、
先代経営者から贈与などにより取得した自社株式や一定の財産について遺留分算定の基礎財産から除外することや、
事業承継者が取得した株式の価格を、合意時の評価額に固定することが可能となります。

その他、推定相続人が事業を承継するにあたり必要となる資金を支援する金融支援措置に関する規定も設けられていますので、これらの法整備をうまく利用し、新族に対する事業承継を適切な計画をあらかじめ立て、実行していきましょう。


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