2013年4月アーカイブ

質問

相続による株式の分散を防止するために会社の定款に「相続人等に対する売渡請求」の規定を入れたいのですが、注意点はありますか?

答え


「相続人等に対する売渡請求」の規定、
たとえば「相続,合併その他一般承継により当会社の株式を取得した者に対し
当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」
という定めを定款に設けることによって、
株主として好ましくない者に株式が相続された場合に,
その定款の定めに基づいて売渡し請求の株主総会決議を行うことで,
会社は強制的に株式を買い取ることが可能になります。
ただし、売渡請求ができるのは相続等があったことを会社が知った日から1年以内で、
対象となるのは譲渡制限株式のみであり、取得には財源規制があります。

「相続人等に対する売渡請求」の規定を設けることによって
相続による株式の分散を防止したり、
会社の望まぬ者へ株式が渡らないようにすることができますが、
この規定が裏目に出る場合もあります。
それは、オーナー社長が早期に亡くなった場合、
オーナー社長の相続人に対し売り渡しの請求がなされる可能性があるという点です。
会社が株式を買い取る際の株主総会の決議では、
売渡請求の対象者は議決権を行使することができないため、
例えば、オーナー社長が全株式の90%を、他の株主が10%の株式を持っている会社で、
オーナー社長が亡くなった場合、
他の株主だけの決議で、オーナー社長が保有していた90%の株式を会社に買い取らせて
オーナー社長一族を会社から排除してしまうこともできるのです。
ですから「相続人等に対する売渡請求」の規定を定める場合は、
このようなリスクを回避する策を同時に講じておく必要があります。


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質問

この度役員退職金を支給することになりましたが、その支給にあたっての税務上の注意点を教えてください。

答え

役員退職金については、役員自身が退職金の決定に関与でき、また一般的に高額になる場合が多くなり、いわゆるお手盛りになりがちです。課税当局も役員退職金の支給については税務調査においてよく調べる項目の一つですので、否認をされないように細心の注意を払うようにしましょう。

支給した役員退職金が否認されないために、税務上注意すべき点は以下のとおりです

① 役員退職金規定を整備する
役員退職金を支給する前に役員退職金規定を整備し、それに従って支給額を決定してください。当然ですが具体的な支給額がキチンと計算できるように決めておきましょう。
一般的には、役員退職金=最終報酬月額×在職年数×功績倍率 の算式で計算している場合が多いようです。

② 役員退職金が過大とならないようにする
税法上、業務に従事した期間、退職の事情、同業種・同規模の会社の支給状況に照らして不相当に高額である場合には、その高額と認められる部分の金額は損金(経費)となりません。
なお、上記の算式にある功績倍率は、昭和55年5月の東京地裁の判決によれば、社長=3.0、専務=2.4、常務=2.2、平取締役=1.8、監査役=1.6が妥当とされています。

③ 株主総会等で役員退職金支給のための決議を行う
役員退職金を支給するためには、株主総会・取締役会の決議が必要となります。したがって、役員退職金を決議した内容の議事録を作成し、証拠として残しておく必要があります。

④ 退職後は経営の第一線から身を引く
当たり前の話ですが、役員を退職して退職金をもらったのですから、退職により実際に経営の第一線から身を引かなければなりません。したがって、退職しても経営の都合上、止むを得ず会社に残る場合には注意が必要です。
なお、退職をしなくとも支給した役員退職金が損金(経費)になる場合があります。詳しくはQ「役員の分掌変更等の場合の退職金について」を参照ください。

さて、役員が死亡により退職した場合には、Q「死亡退職金等の非課税」でも説明したように、一定の弔慰金を支給した場合には、支給した金額は会社で損金(経費)となります。
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質問

役員が会社を退職しなくとも、税務上、役員退職金の支給が認められる場合があると聞いたのですが。

答え

当たり前の話ですが、会社を退職せずに役員退職金を支給したとしても税務上、損金(経費)にはなりません。しかし、退職した場合と同様な事情があると認められる場合には、会社を退職しなくとも役員退職金を支給して、損金(経費)にすることができます。

上手くこのスキームを利用すれば、役員退職金を支給して株価を引き下げ、後継者に対して自社株を安く売却・贈与することも可能です。

具体的には、例えば以下のような役員の分掌変更・改選による再任等により、その役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様な事情にあると認められる場合には、その支給した役員退職金は損金(経費)に算入します。

① 常勤役員が非常勤役員になったこと(代表権を有してはダメ)
② 取締役が監査役になったこと
③ 分掌変更等の後における報酬がおおむね50%以上に減少したこと
④ 実際に退職金を支払いがされていること(未払い、分割払いはダメ)

なお、上記はあくまでも例示として列挙されているものですので、上記の①~④のすべてを満たしたとしても、「実質的に退職したと同様な事情」がなければ適用されません。
(税務当局はこのような場合、形式的に判断するのではなく、実質的に判断をします。)

したがって、退職金支給後もその役員が実質的に会社経営上主要な地位を占めている場合、例えば会社を引退したとしても会社経営の最終決定を行っている場合には、その支給した役員退職金が損金(経費)とならないことがありますので注意が必要です。

またQ「役員退職金支給についての注意点」でも述べたように、支給した役員退職金を損金(経費)するためには、いくつかのポイントを守る必要がありますので、こちらも注意が必要です。
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