2013年7月アーカイブ

質問

事業承継の対策として「成年後見制度」の利用があると聞きましたが、どのような制度なのでしょうか?

答え


「成年後見制度」は、裁判所の手続により後見人等を選任してもらう「法定後見制度」と、当事者間の契約によって後見人を選ぶ「任意後見制度」に分かれます。

法定後見制度」は、既に判断能力が衰え、自分で後見人等を選ぶことが困難になった場合に利用されるもので、家庭裁判所の審判により本人の状況に応じて後見人や保佐人・補助人が選任され、法律面や生活面で判断能力が不十分になった方を支援します。
任意後見制度」は、ご自身がまだしっかりされている時期に、将来能力が不十分となった場合に備えてあらかじめ、財産管理などを任せたい人との間で、万が一のとき自分の代わりに行ってもらいたい事務等の委任をしておく契約を結ぶことができる制度です。

2種類の制度のうち事業承継への活用が期待されるのは、「任意後見制度」ですので、今回はこの制度の利用の流れに触れてみます。

①まず最初に、自分の判断能力が低下した場合に財産の管理等、自分に代わってしてもらいたいことを検討します。
②自らの代理人としたい人(「任意後見受任者」)を選びます。
「任意後見受任者」は、特に資格の制限はなく、親族や友人の中から選ぶことも、弁護士・司法書士等の専門家を選ぶこともできます。法人でも、また複数の人でもなれます。
委任する事務の範囲など、任意後見契約で定めておきたい内容について本人と「任意後見人受任者」との話し合いで決めます。 
③話し合いで決めた内容で本人と「任意後見受任者」との間で任意後見契約を結び、契約書を公正証書により作成します。
公証人の嘱託により任意後見契約がされた旨の登記がなされます。
④契約は本人の判断能力があるうちは効力を生じません。
⑤その後、本人の判断能力が衰えてきた場合に、家庭裁判所に「任意後見監督人」選任の申立を行います。「任意後見監督人」は「任意後見人」の権利濫用を防止する役割を担います。
家庭裁判所によって「任意後見監督人」が選任されると任意後見契約の効力が生じます。
以降「任意後見人」は契約で定められた特定の法律行為を本人に代わって行います。

生涯ご本人の判断能力が衰えることがなければ、任意後見契約は使われることなく終わります。それを使わないで済むこと自体、素晴らしいことです。
任意後見契約は万が一のためのある種の保険のような役割と言えるでしょう。

任意後見契約締結の流れ.gif

質問

後継者候補の従業員が複数いて、一人を選ぶことが難しいのですが?

答え

利害関係者の納得感を基準にしてみましょう


 後継ぎを従業員の中から選ぶ時に、候補者が複数いて一人に絞れない、というケースがあります。 多くの場合、候補者の資質に甲乙がつけ難い、というのが理由ですが、果たして、このような場合にはどうすべきでしょう?


 結論を出す前に、少しまわり道をして、親族に承継する場合を考えてみましょう。


 後継ぎとして、従業員よりも親族、特に息子(娘)を選ぶことは、(割合は年々低下していますが)未だに一般的だと言えます。 ではこの場合、社長の息子(娘)が、既存の従業員の誰よりも、後継ぎとしての資質を備えているか、と言えば、必ずしもそうだとは言えません。


 身も蓋もない話をすれば、社長の息子(娘)が、後継ぎとしての資質に欠けることは、大変よくあることなのです。 それにも関わらず、息子(娘)を後継ぎにした方がうまくいく場合が多いのです。 どうしてでしょう?


 これには幾つか理由が考えられますが、利害関係者の納得が得られやすいことは、大きな理由としてあげられます。 優秀な政治家(?)でも、支持率が下がれば立ち行かないのと同様に、社長も、周囲の支持があって初めて、企業の経営者として力をふるえるのです。


 では、話を元に戻して、複数の後継ぎ候補(従業員)から一人を選ぶ場合を考えてみましょう。 前述の通り、各人の資質には大きな差がありません。 そこで、それぞれの候補が後継ぎになった場合の利害関係者の反応を想像してみましょう。



  • 他の株主(いれば)の納得が最も得られる候補(あるいは、最も得られない候補)
  • 取引先や金融機関の納得が最も得られる候補(あるいは、最も得られない候補)
  • 従業員(他の後継ぎ候補を含む)の納得が最も得られる候補(あるいは、最も得られない候補)

 このようにして候補を比較して、最も利害関係者の納得が得られやすい候補を選んでいくことは、大変重要なことです。


 もちろん、納得を得るためには、社長の丁寧な説明が欠かせません。 特に、他の株主や親族(株主でなくても)に対しては、親族内に後継ぎ候補がいないこと、従業員から後継ぎを選ぶこと、等を含めて、きちんと説明して納得を得ることが不可欠です。


 丁寧な説明をする上でも、他の株主や親族、取引先に受け入れられやすい人物、承継後に社内(従業員)が混乱する恐れが最も少ない人物を、後継ぎにした方が良いでしょう。


 


 


 


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