現状認識や原因分析はさておき、「自らの営業力で事業を発展させてきた」と自負する社長さんにとって、営業活動にあまり前向きでない後継者は、不安の種でしょう。
さて、営業活動に限らず、特定の経営スキルに対して苦手意識が強いあまり、その分野の企業活動が顧みられない、というのは、経営リスク要因となります。
例えば、中小製造業の場合、少量多品種生産を進めた結果、作っている製品の2,3割が赤字、という状況は、わりとよく見かけられます。 経理や生産管理の仕組み、パソコン操作等に対して苦手意識が強いために(あるいは、過去に成功した経験に頼ることで)、収益性の管理をどんぶり勘定でよしとしてしまい、勘と度胸で赤字販売を続ける社長さんが、比較的多くいらっしゃるのです。
また、実質的な残業代未払いが続いていたり、あるいは労働災害を防止する取り組みが不十分だったりと、労務管理上のリスクに無関心な中小企業も珍しくありません。 法律や社会の目が厳しくなっていても、企業が順守すべきルールに対する社長さんの関心が低いままで、企業の存亡に関わりかねないリスクが放置されるのです。
このように見ていくと、顧みるべき企業分野、経営者に求められるスキル分野は数多くあります。 そして大抵の社長さんは、その全てが得意ということはなく、その全ての分野を顧みて経営をしてきた訳ではないのです。
そうすると、後継者も、幅広い企業活動の中から、知識や関心のある分野のスキルを身に付けて伸ばしていけば良いと言えます(もちろん、伸ばす分野は一つでも多い方が望ましいです)。 そして十分気を付けるべきなのは、後継者が特定の経営スキルを持たないことや、後継者個人がその分野にあまり知識や関心がないことと、会社として、その分野に関心を払わずに経営を続けることを混同しないこと(例えば後継者に営業スキルがなくても、会社としての営業活動には関心を払うこと)だと言えます。
さらに、企業経営は社長さん一人でする訳ではないので、例えば営業が苦手な社長さんであれば、営業のエキスパートを役員に加える等、事業承継に向けて、バランスの取れた新経営体制を構築するようにしましょう。
カテゴリー:STEP2 候補者選び・後継者育成