後継者(候補)が、新規事業立ち上げなど、難しい役割を担うことがあります。 特に、後継者としての実力が十分であることを、社長や後継者自身が社内外に対して示したい時に、後継者を新しいことにチャレンジさせて、実績を残そうとする傾向が見られます。
次の世代に備えるため、会社として新規事業を育てることは、大変重要なことです。 ただし、新規事業の立ち上げを任せる場合、後継者が新規事業に注力するあまり、既存事業を含む社内全般に対する知識や興味、さらに既存事業に関わる従業員や取引先との関係をおろそかにしないよう、十分気をつける必要があります。
また、新規事業立ち上げは、必ず失敗のリスクを伴います。 仮に新規事業が上手く立ち上がらなくても、後継者が(失敗の責任を一身に背負って)社内での求心力を失わないよう、新規事業は、一部のメンバーだけ取り組むものではなく、全社的な取り組みにするべきです。
さて、そもそも事業承継の目的は、会社の事業を後継者に引き継ぐことであり、新しい事業を立ち上げることではありません。
事業承継も、新しい事業を育てることも、企業の長期的な継続のために必要であり、どちらも難易度が高く、ヒト・カネ・時間がかかる取り組みです。 仮に後継者が新規事業の立ち上げに成功したとして、それは事業承継のプロセス全体から見れば、その一部をこなしたに過ぎません。 むしろ、新規事業に労力をかける分、事業承継は進んでいないと言えます。
つまり、事業承継を急ぐのであれば、このタイミングでは新規事業に手を出さない(後継者に新規事業の立ち上げを任せない)方が良いということです。 新規事業立ち上げと事業承継との間には、きちんと優先順位をつけましょう。
カテゴリー:STEP2 候補者選び・後継者育成