当たり前の話ですが、会社を退職せずに役員退職金を支給したとしても税務上、損金(経費)にはなりません。しかし、退職した場合と同様な事情があると認められる場合には、会社を退職しなくとも役員退職金を支給して、損金(経費)にすることができます。
上手くこのスキームを利用すれば、役員退職金を支給して株価を引き下げ、後継者に対して自社株を安く売却・贈与することも可能です。
具体的には、例えば以下のような役員の分掌変更・改選による再任等により、その役員としての地位又は職務の内容が激変し、
実質的に退職したと同様な事情にあると認められる場合には、その支給した役員退職金は損金(経費)に算入します。
① 常勤役員が非常勤役員になったこと(代表権を有してはダメ)
② 取締役が監査役になったこと
③ 分掌変更等の後における報酬がおおむね50%以上に減少したこと
④ 実際に退職金を支払いがされていること(未払い、分割払いはダメ)
なお、上記はあくまでも例示として列挙されているものですので、上記の①~④のすべてを満たしたとしても、「実質的に退職したと同様な事情」がなければ適用されません。
(税務当局はこのような場合、形式的に判断するのではなく、実質的に判断をします。)
したがって、退職金支給後もその役員が実質的に会社経営上主要な地位を占めている場合、例えば会社を引退したとしても会社経営の最終決定を行っている場合には、その支給した役員退職金が損金(経費)とならないことがありますので注意が必要です。
また
Q「役員退職金支給についての注意点」でも述べたように、支給した役員退職金を損金(経費)するためには、いくつかのポイントを守る必要がありますので、こちらも注意が必要です。